「スーパーマーケットはブラックだからやめとけ」や「スーパーマーケットは労働時間が長く、休みが少ない」と言われているのを耳にする人もいるのではないでしょうか。確かに、小売業は営業時間が長く年中無休の店舗も多く、そのようなイメージを持っている人は多くいます。
全国には2000社近くのスーパーがありますが、会社の規模もそれぞれ違うので、全ての小売業界やスーパーがブラックというわけではありません。そう思われる理由があります。今回は、チェーンスーパーマーケットを運営している企業の人事担当として、10年間ほど勤務した筆者が「本当にスーパーマーケットはブラックなのか?」を解説します。
スーパーマーケットがブラックだと言われる理由5選
スーパーマーケットがブラックだと言われる理由は、主に次の5つです。
- 拘束時間が長い
- 残業が多い
- 土日、年末年始、お盆は休めない
- 給料が安い
- 年中、求人募集をしている
ひとつずつ解説します。
1. 拘束時間が長い
これには、スーパーマーケットの人員構成に問題があります。従業員は、パート・アルバイトがほとんどで、社員は店長、副店長、部門責任者くらいです。パート・アルバイトは主婦や学生が多く、時間の制約もあります。人件費を抑えるため、ギリギリの人数で運営しているのです。さらに、公休の他に有給休暇などの休みも与えなければならず、人員不足に陥りがちです。
人数が少ないため、どうしても一人ひとりの負担が大きくなってしまいます。通常は、1日8時間労働が原則です。店舗が23時までの営業だったとしても、シフト制で「早番・遅番」があります。シフト通りに勤務をすれば、拘束時間が長くなることはありません。
筆者が勤務していた店舗は、平均すると社員の拘束時間は10時間でした。シフトが組めるほどのスタッフがいなかったため、社員は開店から閉店まで勤務していたのが現状です。小規模なスーパーマーケットだと、このようなことが起こりやすい傾向にあります。
2. 残業が多い
スーパーマーケットは、他の企業に比べるとシステム化が遅れていることが少なくありません。例えば、売り上げを集計する時に、人の手で数えるのと機械で数えてくれるのでは作業効率が違います。このような作業を閉店後に行えば、残業になるのは当然です。また、スーパーマーケットに限らず、小売業が抱えている問題は他にもあります。
たとえば以下のようなものです。
- 人手不足による作業効率の低下
- 在庫不足による機会損失
- レジ待ちの行列による顧客満足度の低下
- 万引きによる損失
これらはシステム化やDX化で改善できます。「作業効率を上げて残業を減らす取り組み」を行っているスーパーマーケットは少なくありません。しかし、小規模店舗では、投資コストがかかるため導入できていないのが現状です。
3. 土日、年末年始、お盆は休めない
スーパーに限らず、サービス業は土日のお客様が多くなります。一般的に土日は仕事が休みの人が多いためです。全く取れないわけではありませんが、希望日に休めるとは限りません。中でも、お盆やクリスマス、年末年始などは最もお客様が多い時期で、全員出勤しなければならないほど忙しくなります。
みんなが休んでいる時が稼ぎ時なので、ここは仕方ないですね。
4. 給料が安い
一般的に小売業は薄利の業種なので、企業の規模にもよりますが給料は安い傾向です。他業界と比べても、給与水準は決して高くありません。国税庁の資料によると、小売業界の平均年収はボーナスも含めて408万円程度となっています。全ての業界の平均が467万円なので、約60万円ほど安いです。
アルバイトの時給も、最低賃金に合わせている企業は少なくありません。
5. 年中求人募集をしている
求人募集はしているものの、なかなか人が集まらないのが現状です。採用できたとしても、仕事量に見合った給料に満足せず、やめていく人も多くいます。スーパーマーケットは「きつい」というイメージがあり、人気がない職種です。そのため、年中人手不足となっています。
なかなか応募がないために、年中求人募集をしているお店も少なくありません。実は、これが逆効果なのです。いつも求人をしているので、「すぐに人がやめる会社なんだな」というイメージを持たれています。
企業努力はすすんでいる
近年はどの業界でも働き方改革が行われ、ずいぶん労働環境も変化しています。もちろん、スーパーマーケットも例外ではありません。なかなか、システム化ができていない業界ではありますが、できるだけ、従業員の負担を減らす努力はどのスーパーマーケットも行っています。
次のような企業努力が代表的です。
- 労働時間を減らすために、営業時間を短縮する。
- 休みを取れるように、定休日を設ける。
- 朝の品出しや棚卸しは、専門業者に委託する。
労働問題はどの企業でも課題です。
ブラックなスーパーを見極めるには
ブラックなスーパーに入社しないためにも、見極めが必要です。ブラックスーパー見極めのコツは次の2つです。
- ネットの情報だけを鵜呑みにしない
- 実際に自分の目と耳で確かめる
ひとつずつ見ていきましょう。
1. ネットの情報だけを鵜呑みにしない
見るべきポイントは記事や口コミの信ぴょう性です。「書いた人はどれくらいの業界歴があるのか」「書き込んだ人のいたスーパーの規模」などは見るべきポイントです。「半年くらいしか勤務していない人」と「数年勤務した人」では、経験値が違います。規模の大きさも大切です。
大手企業にいたのか中小や個人スーパーなのかで、労働環境が大きく異なります。どんなスーパーで何年くらい勤務していたのかは、真実を知る上でとても重要です。
2. 実際に自分の目と耳で確かめる
自分の目で実際にスーパーを見てみるのが一番です。見る時間帯や曜日によって忙しさも変わってきますので、時間帯を変えて見に行きましょう。店の雰囲気などは見ないとわからない部分も少なくありません。お店の人に就活生であることを伝えて、実際に話を聞くとより詳しくわかります。ぜひ聞いてみてくださいね。
スーパーはいろんなことが学べる
スーパーは、接客はもちろん、マーケティングやビジネスの基本である数値管理(人員管理、売上管理、販売予測)などが学べる仕事です。主な仕事内容は、次のようなものがあります。
- 店舗での販売
- バックオフィス業務や広告などの販売促進
- 主に仕入れを担当するバイヤー
- お肉やお魚、野菜などを扱う生鮮部門
- お惣菜やお弁当を扱うデリカ部門
- インストアベーカリー(焼き立てパン)
このように、経験できる仕事がたくさんあります。また、社内はもちろん取引業者やお客様、パート・アルバイト、外国人留学生など、老若男女問わず、多種多様な人と関わることのできる業種です。肉体的にもきつい仕事ではありますが、学べることがたくさんあります。数値管理や、パート・アルバイトのマネジメント経験などは、他の職種でも活かせるので、身につけていても損はありませんね。
興味がある人は、ぜひチャレンジしてみてください。
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