こんな人におすすめ
- 今の生命保険に加入しているが、保障内容や保険料に不安がある。
- 近年、自分や家族のライフプランが変化したため、保険の見直しを考えている。
- 生命保険の見直しをしたいけど、よくわからない。
生命保険に加入していて見直しをしたいと思っている人も多いのではないでしょうか。しかし、保険の専門用語や細かい保障内容は、一般的な知識では簡単に理解できないものが多いですよね。生命保険は生活に変化があるごとに見直して、今の状況に最適な保障内容にしておくことが重要です。
見直しのタイミングと、ポイントが理解できれば自分でも見直しができるようになります。この記事では、ファイナンシャルプランナーの筆者が「ライフイベントに応じた保険の見直し方とポイント」を解説します。
この記事でわかること
- 生命保険を見直すタイミング
- 生命保険を見直すことで得られる効果
- 生命保険を見直す時に注意すること
生命保険を見直しするタイミング【ライフイベント別】
生命保険に加入しているけど、加入した時からそのまま放置している人も少なくありません。生命保険は「生き物」と言われており、ライフイベントで生活スタイルが変わるたびに定期的に見直す必要があります。なぜなら、収入や家族に増減があったときは、備えるべき保障も大きく変化するからです。
生命保険を見直すべきタイミングには以下のようなときです。
- 就職したとき
- 結婚したとき
- 子供が生まれたとき
- 子供が独立したとき
- 定年したとき
順番に見ていきましょう
就職したとき
就職したときに初めて生命保険に加入した人もいるのではないでしょうか。新社会人になったときは、自分で収入を得るようになりますが、万が一のときは収入もなくなり治療費などもかかります。そのため、生命保険に加入するのが一般的です。ただ、新社会人は給料も高くないため、「最低限の医療保障」を準備しておくとよいでしょう。
生命保険文化センターの令和3年度「生命保険に関する全国実態調査」によると、世帯主が29歳以下では90.8%の人が「医療保険」や「医療特約」に加入しています。20代は若く健康であることが多いため、病気やけがによる入院や手術などのリスクは低いとされています。しかし、突然の病気や事故によって医療費がかかる可能性はゼロではありません。
20代なら入院日額5,000円程度の「医療保険」に加入しておくとよいでしょう。
結婚したとき
結婚したら、自分に万が一のことがあったときの配偶者の生活を考えなければなりません。そのため、生命保険を見直すタイミングです。配偶者の働き方や子供の有無によって必要な保障内容が変わってきます。
保障の目安を表にまとめてみました。
死亡保障
妻の職業 | 死亡保障の目安 | |
夫 | 会社員 | 500万円〜1,000万円 |
パート・専業主婦 | 1,500万円 | |
妻 | 子供なし | 300万円〜1,000万円 |
医療保障
妻の職業 | 入院保障の目安(日額) | |
夫 | 会社員 | 5,000円 |
パート・専業主婦 | 10,000円 | |
妻 | 子供なし | 5,000円 |
もしも、妻が専業主婦の場合なら医療保障は早めに考える必要があります。なぜなら、妊婦は新規で医療保険への加入ができないことがあり、加入できても子宮・卵巣部位の保障がされない「部位不担保契約」になってしまう可能性があるためです。
子供が生まれたとき
子供が生まれたときは死亡保障の増額を考えましょう。夫に万が一のことがあったときは、妻と子に対して「遺族年金」が支給される仕組みがあります。しかし、遺族年金だけで生活費や子どもの教育費をすべてまかなうのは不可能です。そのためにも、夫の死亡保障が必要になります。
生命保険文化センターの令和3年度「生命保険に関する全国実態調査」によると、40歳未満の子どもなし世帯は、平均1,983万円の普通死亡保険に加入しています。一方で、保育園児や幼稚園児の末子がいる世帯は、平均2,846万円です。
このように、子どもなし世帯よりも子どもあり世帯のほうが、加入している普通死亡保険金額が高いです。また、保障金額は子どもの人数や共働きかどうかで異なります。
子供が独立したとき
子どもが独立すると老後の生活費や医療費のことを考えるタイミングです。子どもの教育費や養育費がかからなくなくなるため、死亡保障を減らす一方で健康状態や貯金も加味しながら、医療保険の増額や個人年金保険の見直しを行いましょう。
子どもが独立したタイミングで、自分や家族の状況に合わせて保険料を見直すことで、必要な保障を適切なコストで確保しやすくなります。
定年したとき
定年したら高額な死亡保障は不要です。一方で、そろそろ配偶者への保障や葬儀費用を考えなければなりません。そのためには「終身保険」をうまく活用することです。
終身保険は保険料が高いことがデメリットですが、高額な死亡保障は不要なので、必要な分だけを備えれば費用は抑えられます。予算や払込期間を考慮して選択しましょう。「定期付終身保険」に加入していれば、定期保険部分だけを解約して終身保険を残すことで費用が抑えられるのでおすすめです。
生命保険を見直しするタイミング【番外編】
人によっては次のようなライフイベントの可能性があり、よく質問がある項目です。
- 住宅を購入したとき
- 転職したとき
- 独立したとき(自営業)
- 離婚したとき
番外編として紹介するので参考にしてください。
住宅を購入したとき
意外に知られていないのが住宅を購入したときです。住宅は住宅ローンで購入するのが一般的ですが、金融機関では住宅ローンを組む際に「団体信用生命保険」に加入しなければなりません。
万が一のときは残りの住宅ローンが保険金で相殺されるため、その分、死亡保障を減額できます。しかし、フラット35や一部金融機関では、団信が任意加入の場合があるので注意が必要です。その場合は、死亡保障を増額する必要があります。
転職したとき
転職すると給料が変わることも少なくありません。転職により雇用形態が正社員から契約社員やパートタイマーなどに変更される場合、雇用保険や健康保険などの社会保険料や保障内容も変わる可能性があります。特に、給料が下がった場合などは保険料が負担になるので注意が必要です。
そのため、生命保険も見直しを検討する必要があります。
独立したとき(自営業)
会社員と自営業者では病気などで働けなくなったときのリスクが大きく異なります。会社員なら健康保険から「傷病手当金」などの給付が受けられますが、自営業は働けなくなっても給料の補償はありません。
収入がない状態でも住宅ローンなどの支払いは続くため、働けなくなった際のリスクにも別途備える必要があります。そのため、自営業は「収入保障保険」や「就業不能保険」を検討しましょう。また、厚生年金に加入していないため、遺族厚生年金がなく会社員よりも遺族年金が少なくなるので注意が必要です。
離婚したとき
離婚などでシングルマザー(ファザー)になったときは、結婚当時やそれ以前に加入していた保険の内容を見直す必要があります。見直すべきところは死亡保障と子供の教育資金です。死亡保険と医療保障は厚めにし、余裕があれば収入保障もあった方ほうがよいでしょう。
もし、子どもが小さいのであれば、教育資金はあまりお金のかからない時期から「貯蓄型の保険で、大学進学時の教育費の一部にする」のがおすすめです。逆に、扶養する子どもがいなければ減額しましょう。
生命保険を見直す時のポイント
生命保険は、ライフイベントに変更があったときに見直さなければならないことはわかったけど、何を見直したらいいかわからない人もいるのではないでしょうか。見直す時に重要なポイントを7つ紹介します。
- 今の契約内容を確認する
- 今後起こり得るリスクを考える
- 保険料は無理のない金額か
- 保障期間は適正か
- 保険金の受取人は適切か
- 定期保険か終身保険のどちらにするか
- 保障内容を増やすか減らすか
何から手をつければ良いかわからない人は、まず上記を考えましょう。詳しく解説します。
1. 今の契約内容を確認する
まず、自分が加入している保険内容がどのようになっているかを把握しましょう。内容は加入したときに受け取った約款と呼ばれる冊子に細かく記載されています。書いてあることが細かすぎて、読むべきところがわかりづらいのですが、以下の点を確認すれば大丈夫です。
- 保険金額と受取時期
- 保険料と払込期間
- 特約の内容
- 複数の保険に加入している人は保障内容が重複していないか
- 定期保険の場合は更新時期
2. 今後起こり得るリスクを考える
加入当時から生活状況が変化し、備えるべきリスクが変わっている人もいるのではないでしょうか。現在の生活状況から、今後どのようなリスクがあるのかを考えてみましょう。子どもの教育費はいつがピークか、定年まで何年あるかなどさまざまなリスクをもとに、対応できる保障内容を決める必要があります。
3. 保険料は無理のない金額か
できるだけリスクに対する備えをしたいところですが、保険料を払うために生活に支障が出ては本末転倒です。そのためには、今の収入に対していくらまでなら保険料に充てられるのかを事前に確認しておくことが重要です。予算を決めることで、保険の見直しがスムーズになります。
一般的に、年齢が上がるにつれて保険料も上がるため、ある程度の余裕を持って収支を計算しておくのがポイントです。
4. 保障期間は適正か
保険期間が決まっている定期保険と、保障が一生涯続く終身保険があります。まず、この保険期間の違いを理解しておきましょう。定期保険は、一定期間が過ぎると保険期間が満了します。そのため、満了後は契約更新や新規加入が必要です。ただし、年齢が上がるにつれて保険料は上がるため、更新したときの保険料は今までよりも高くなります。
一方、終身保険は保険料が変わらず、保険期間は一生涯続きますが保険料も払い続けなければなりません。保障期間がどれくらい必要なのかは必ず検討しましょう。
5. 保険金の受取人は適切か
死亡保険金や満期保険金、解約返還金には税金がかかります。この受取人を誰にするかによって、かかる税金の種類や金額が変わるので注意が必要です。被保険者(保険がかけられている人)と契約社(保険料を支払う人)、保険金の受取人がそれぞれ誰になっているかを確認しておきましょう。
たとえば、死亡保険金は相続税の対象となるため、法定相続人(配偶者や子どもが一般的)1人あたり500万円までは非課税となり税金はかかりません。しかし、保険金の受取人を法定相続人以外(孫など)にしていた場合は、受け取った保険金に対して1.2倍の相続税がかかるのです。
このように、誰が保険金を受け取るのかによって、税額が変わることがあるため、確認しておく必要があります。
6. 定期保険か終身保険のどちらにするか
生命保険は大きく分けて、保障に特化した定期保険と、保障と貯蓄の機能がある終身保険に分けられます。定期保険は基本的には掛け捨てで、一定期間に万が一の状況にならなかったときは保険金を受け取れません。一方、終身保険は被保険者(保険がかけられている人)が死亡したときに死亡保険金が支払われ、解約すれば解約返戻金が支払われます。その分、保険料は高めに設定されているのが特徴です。
現在、加入しているのは「定期保険」なのか「終身保険」なのか、また「自分に合っているか」を考えて見直しの判断をしましょう。
7. 保障内容を増やすか減らすか
生命保険を見直すときに重要なのは万が一のときに備える額として十分かどうかです。保険金がどれくらい必要なのかは、状況や人によって異なり時間がたてば変化します。今の保障で生活に必要な金額がまかなえるかどうかのシミュレーションが必要です。その上で、保障内容を増やすか減らすかを検討しましょう。
また、貯蓄性のある保険に入っている場合は、解約のタイミングによって、払い込んだ保険料よりも解約返還金が大きく下回ってしまうことがあるので注意が必要です。今、解約すると解約返還金はいくら受け取れるのかを確認しておきましょう。
生命保険を見直しするポイント【年代別】
世代別ごとの保険を見直すポイントを知っておけば、年齢の節目で定期的に見直すことが可能なので、ここでは世代別にポイントを解説します。
- 30代の保険の見直しポイント
- 40代の保険の見直しポイント
- 50代の保険の見直しポイント
- 60代の保険の見直しポイント
自分の年齢にあてはめてみてください。
30代の保険の見直しポイント
30代は結婚や出産などのライフイベントがもっとも多い世代なので、新しくできた家族のことも考えたリスクの備えが必要です。ライフイベントがあったら早めに見直しすることがおすすめです。なぜなら、年齢が若いうちに加入したほうが毎月の保険料が安くなり、健康な人が多いため選択肢が豊富というメリットがあるからです。
一方で、将来的には内容が合わなくなってくるので、合わなくなったタイミングで見直しが必要なことは覚えておきましょう。
40代の保険の見直しポイント
40代は子どもの教育費や健康リスクが高まりはじめる世代です。今までの契約内容では必要な保障が準備できておらず、いざという時に不都合が生じることも少なくありません。また、逆に無駄に保険料を払っているケースもあります。
生命保険文化センターの令和元年度「生活保障に関する調査」によると、40代の男性は91%、女性は89%と約9割の人が生命保険に加入しているのです。世代別で見ても、男女ともに40代の保険加入率が最も高くなっていることから、一番リスクを抱えている世代だと言えます。
このことからも、自分の健康リスクへの備えと、家族ができたときの備えを考えた見直しが必要です。
50代の保険の見直しポイント
この世代になると、子どもの独立や役職定年を迎えるなど、若い頃に次いでライフイベントが多い世代です。健康に関するリスクも高くなってくるので、医療保障を充実させた見直しを検討しましょう。
特に、医療保険やがん保険に加入するときは健康状態を告知して審査を受ける必要があり、場合によっては新規加入や保障の増額ができない可能性があります。そのためにも、早めの見直しがおすすめです。
60代の保険の見直しポイント
60代はほとんどの人が定年退職し、老後の生活がはじまる世代です。収入源は年金が主で、今までの貯金と年金で生活していくことになります。一方で、健康状態が不安になってくる時期でもあり、実際に何らかの健康不安を抱えている人も少なくありません。できるだけ支出を増やさないためにも、月々の保険料は減らすべきです。
万が一のときに、まとまった金額の保険金が受け取れる「定期保険」に加入したままになっている人も少なくありません。子供がすでに独立しているなら教育費の備えは必要ないため、高額な死亡保障は減額しましょう。定期保険の代わりに終身保険への加入がおすすめです。
終身保険に加入すれば葬儀代やお墓代などの支払いに備えられるだけでなく、法定相続人を保険金の受取人にすることで相続税対策にもなります。現在加入している保険の種類と保障内容を確認して、必要であれば見直しを検討しましょう。
生命保険を見直しするときの注意点
生命保険を解約するときには注意しないと損をしたり、新たに加入できなかったりすることがあります。最後に、見直すときの注意点を6つ解説します。
- 解約すると元本割れになることがある
- 貯蓄型保険は解約しないほうがよいこともある
- 免責期間がある保険に注意する(特にがん保険)
- 今の健康状態によっては新規加入できないこともある
- 増額するか新規で加入するかは慎重に
- 転換には注意する
しっかり考えた上で見直しましょう。
1. 解約すると元本割れになることがある
保険を解約したときに戻ってくる解約返戻金は、保険会社が保険金を支払うために積み立てているお金(責任準備金)のうち、解約控除が差し引かれた金額です。そのため、保険の契約期間によっては支払った保険料の総額よりも解約返戻金が少なくなってしまうことがあります。
このように、保険を見直すときに解約を伴う場合は、元本割れの可能性があることを覚えておきましょう。
2. 貯蓄型保険は解約しないほうがよいこともある
ずいぶん前に契約した貯蓄型保険は、今よりも予定利率が高いことが少なくありません。一旦、解約してしまうと、このような利率の高い保険には二度と加入できないので、これらの保険は継続するのがおすすめです。
3. 免責期間がある保険に注意する(特にがん保険)
保険の中には「待機期間」と呼ばれる免責期間が設定されていることがあります。待機期間は保険金が支払われません。特に、がん保険は「申込書の提出、健康状態の告知、1回目の保険料払込み」のいずれか最後に行われた日から数えて約90日間は支払われないことがあります。
保険が適用されないということにならないためにも、免責期間は確認しておきましょう。
4. 今の健康状態によっては新規加入できないこともある
生命保険を見直すときに、次の保険に加入する前に、現在加入している保険を解約すると無保険状態になる可能性があります。たとえば、持病があると健康状態や年齢などによっては、審査に通らないことも少なくありません。
次の保険に加入するまで無保険状態のときに、ケガや病気になれば保険金は出ないため、医療費は自分で負担しなければなりません。そのため、保険を解約するときは「次の保険に加入してから解約する」ことが原則です。
5. 増額するか新規で加入するかは慎重に
現在、加入している保険の保険金を増額するか、新たに別の保険に加入するかでメリットが大きく変わることがあります。単に、保険金の増額を検討するだけでなく、新規加入も併せて慎重に検討が必要です。
どちらがメリットが大きいかは加入時期などで異なるため、保険会社に両方のシミュレーションを依頼することをおすすめします。
6. 転換には注意する
転換は「現在契約している保険の返戻金を頭金にして、同じ保険会社の異なる保険に加入すること」です。保険会社から転換をすすめられることがありますが、必ずしもメリットがあるわけではないので注意が必要です。転換をすると現在の保険の返戻金は受け取れなくなり、現在の保険より利率が下がることも少なくありません。
シミュレーションを依頼して、一番メリットのある方法で見直しをしまよう。
まとめ【生命保険の見直しは焦らずよく検討してから】
解説してきたように、ライフステージが変わるタイミングは、家族構成などの変化にともなって必要保障額が変わるため、保険の見直しに適しています。生命保険はライフステージごとに定期的に内容を見直し、保障内容と現状の生活に合わせることが大切です。
特に、生命保険に加入してから時間が経っている場合は、生活や環境も変化していることがほとんどなので、見直さなければ必要な保障が受けられません。しかし、焦って解約してしまうと損をしてしまうことも多いため、よく検討した上で見直しましょう。
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