
以前は「派遣社員=賃金が安い」といったイメージがありましたが、近年は「同一労働同一賃金」の施行によって、正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差が解消されています。
働き方改革や副業の解禁などの影響もあり、派遣での働き方を考えている方もいるのではないでしょうか。
そこで、今回は自由度の高い「派遣」か、安定している「正社員」で働くかを迷っている方に、それぞれの違いやメリットとデメリットを解説します。
派遣社員から正社員になる方法も紹介しますので、参考にしてみてください。
この記事でわかること
- 正社員と派遣社員の違い
- 派遣社員として働くメリット
- 派遣社員として働くデメリット
- 派遣社員が向いている人の特徴
- 派遣社員から正社員になる方法
最後まで読めば、自分が派遣に向いているかもわかります。
正社員と派遣社員の違い

派遣社員と正社員では、主に以下の6つが異なります。
- 雇用主
- 雇用期間
- 給与形態
- 勤務時間
- 仕事内容
- 福利厚生
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 雇用主が違う
「正社員」と「派遣社員」の一番の違いは「誰から雇われているか」です。
つまり、どこから給料をもらうかが異なります。
ポイント
- 正社員:就業先企業
- 派遣社員:派遣会社
正社員は、就業先の企業に直接雇用されています。契約社員やパート・アルバイトも就業先の直接雇用です。

一方、派遣社員は派遣会社に雇用されて、就業先は他の企業となります。
就業先の企業との雇用関係はないため、働き方は派遣会社のルールに従わなければなりません。
たとえば、派遣されている会社の福利厚生は、直接雇用の人しか使えない場合が多いので注意が必要です。
2. 雇用期間が決まっている
正社員と派遣社員は「雇用期間が決まっている」か「無期限雇用」かの違いがあります。
正社員は就業先企業に直接雇用され、定年までの無期限雇用です。
ポイント
- 正社員:無期限
- 派遣社員:有期雇用
一方、派遣社員は派遣会社に登録して、仕事を紹介してもらう形で働きます。
これを「登録型派遣」と呼び、派遣会社と雇用契約を結んだ上で、就業先の指示を受けて働く有期雇用です。



契約期間は3か月から6か月が一般的です。
契約期間が満了した場合は、「あなた」「就業先企業」「派遣会社」の3者が合意の上で更新します。
ただし、同じ職場で働ける期間の上限は3年(例外あり)と決まっているのが特徴です。
他にも「紹介予定派遣」や「無期雇用派遣」もありますが、こちは正社員を前提とした雇用になるため、登録型派遣ほど自由度は高くありません。
3. 給与が時給制
正社員と派遣社員は「給与形態」が異なります。
ポイント
- 正社員:月給制、年俸制
- 派遣社員:時給制
正社員は月給制や年俸制が一般的ですが、派遣社員の多くは時給制です。
そのため、ゴールデンウイークや年末年始など、営業日数が少ないと給与も少なくなります。
また、賞与や昇給、退職金もない場合がほとんどです。
4. 勤務時間が選べる
正社員は一般的に「フルタイム」の場合が多く、派遣社員は「希望する勤務時間を選べる」のが一般的です。
ポイント
- 正社員:フルタイム(1日8時間、週5日など)
- 派遣社員:希望条件が選べる
派遣社員はライフスタイルに合わせて働けるのが魅力で、契約が「残業なし」となっていれば、残業もありません。
例えば、子供が幼稚園に行っている10時〜14時までの間だけ働くといったことも可能です。



残業もないので、ワークライフバランスがとりやすいでしょう。
5. 仕事内容が限られている
正社員は会社の指示で勤務場所や業務内容が変わることもあります。
たとえば「人事異動で単身赴任せざるを得なくなった」などは少なくありません。
また、部署異動を命ぜられて、職種が変わることもあります。



ポジションが変わり、責任のある仕事を任されるのも正社員の特徴です。
一方、派遣社員はあらかじめ契約で決めた内容で働くため、契約外の仕事は発生しません。
ポイント
- 正社員:会社の指示により変わることがある
- 派遣社員:契約外の仕事はしない
そのかわり、簡単な業務や単純作業の仕事が多くなり、部下のマネジメントや責任のある仕事を任される機会は少なくなります。
6. 福利厚生が異なる
一般的に住宅手当や家族手当、退職金制度といった福利厚生は、正社員の方が充実しています。
特に、大手企業は子育て支援や長期休暇など、プライベートが充実できる制度を導入している会社も多いです。
派遣社員は就業先の福利厚生は使えません。ただし、派遣会社の福利厚生を利用できます。
ポイント
- 正社員:勤務先の福利厚生を使う
- 派遣社員:派遣会社の福利厚生を使う
託児所や保養施設の利用、スキルアップのためのスクールなど、派遣会社によって受けられる福利厚生はさまざまです。



大手派遣会社の方が、福利厚生は充実している傾向があります。
勤務時間や日数に関係なく、誰でも利用できるので遠慮なく使いましょう。
派遣社員として働く6つのメリット


正社員ではなく、あえて派遣社員としての働き方を希望する人も少なくありません。
派遣のメリットには、以下のものがあります。
- パートよりも時給が高い
- 仕事の責任が小さい
- 自分に合った働き方ができる
- 異動や転勤がない
- 未経験でも求人がある
- 正社員登用が目指せる
詳しく見ていきましょう。
1.パートよりも時給が高い
派遣社員の時給は、パートやアルバイトに比べると高い傾向です。
三代都市圏(関東・東海・関西)で見てみると、平均時給は次のようになっています。
- 派遣社員:1,605円
- アルバイト:1,134円
派遣社員はアルバイトやパートと違い、即戦力と捉えられているため時給が高めに設定されているケースが多いです。
また、企業側は派遣会社に依頼すれば「求人費用」や「社会保険料」などの負担がありません。



派遣社員として働いてもらうことは、企業にとっても大きなメリットとなります。
参照:株式会社リクルート|2022年8月度 アルバイト・パート募集時平均時給調査【三大都市圏(首都圏・東海・関西)】
参照:株式会社リクルート|2022年8月度 派遣スタッフ募集時平均時給調査【三大都市圏(関東・東海・関西)】
2.仕事の責任が小さい
責任感がプレッシャーになってしまう人も多いです。
派遣社員は就業先の主要業務を行う人材ではなく、サポート的な人材と捉えられているケースもあります。
そのため、責任の大きい仕事は社員が行うことが多く、派遣は補助的な仕事を任されることが一般的です。
特に、経理部門などは会社の重要情報が多く、社員でも特定の人にしか扱わせてもらえないことも少なくありません。
責任のある仕事をしたい方にとってはデメリットですが、プレッシャーに感じてしまうという方にはメリットとなるでしょう。
3.自分に合った働き方ができる
派遣社員は、ライフスタイルに合わせて仕事を選べるのが最大の魅力です。
職種や勤務地、休日、労働時間などを自分に合わせられます。
期間の定めがあるので、色々な職種を経験できる点がメリットです。
自分に向いている仕事がわからない人は、いろんな仕事にチャレンジしながら見極めてみると良いでしょう。
4.異動や転勤がない
正社員は「いきたくないと思っていた部署に異動になった」「転勤で別の支店に行くことになった」などの悩みもあります。
派遣の場合は勤務場所や仕事内容を、契約時にきちんと決めてから働くので、そのような心配はありません。
万が一、契約内容とは違うことがあっても、派遣会社から派遣先企業に指導してもらえる仕組みになっています。
一旦契約すると、契約期間中は変更できないのが一般的なので、就業前にしっかり契約内容を決めておきましょう。



時間や仕事内容はしっかり確認しないとトラブルの原因になります。
5.未経験でも求人がある
転職する方の中には「未経験の職種に転職したいけど、自信がない」といった悩みをもっている方も多いです。
派遣には、未経験でも応募できる案件がたくさんあります。
無料で受けられるスキル研修なども行われているので、未経験からステップアップしていくことも可能です。
もし、チャレンジしてみてあわないと思えば、契約更新をせず別の会社を紹介してもらえます。
いろんな仕事を経験しながら、自分に合った仕事を見つけられるのは派遣の大きな魅力です。
6.正社員登用が目指せる
将来的には、社員として働きたいと思っている人も多いです。
このような方には「紹介予定派遣」と呼ばれる、社員になることを前提とした契約もあります。
最長6ヶ月を派遣として働き、その後正社員に転換する働き方です。
もし、この期間にしっくりこなければ、無理に社員になる必要はありません。
また「無期雇用派遣への切り替え」制度を利用して派遣会社の社員になり、派遣先で働く方法もあります。
尚、派遣で働くメリット・デメリットについては、関連記事「派遣として働くメリット・デメリットと向いている人の特徴を解説」でも詳しく解説していますので参考にしてみてください。


派遣社員として働くデメリット


派遣社員には有期雇用ならではのデメリットもあります。
しかし、デメリット把握した上で働けば、リスクを回避しやすいでしょう。
大きなデメリットは次の3つです。
- 最長でも3年の契約となる
- 責任ある仕事が少ない
- 営業日によって給料が変わる
後で後悔しないように、しっかり把握しておきましょう。
1. 最長でも3年の契約となる
派遣には「3年ルール」があります。
「同一の事業所の同一の部署において派遣として働けるのは最大3年で」というルールです。
そのため、どんなに自分にあっている仕事でも、最長で3年までしか同じ場所で勤務できないので覚えておきましょう。



部署を変えれば同じ会社で働けます。
3年後に「直接雇用」に切り替えて同じ勤務先で働く方もいます。
2. 責任ある仕事が少ない
派遣という特性上、仕事の範囲が規約で決まっているので、それ以外の仕事は任されることはありません。
そもそも、長くても3年しか働けないため、どうしても業務の範囲が限定的になってしまいます。
そのため、責任のある仕事は任されないケースがほとんどです。
どちらかと言うと、指示されたことを淡々とこなす仕事が多くなります。
逆に、責任のない仕事が向いている人には、メリットと言えるでしょう。
3. 営業日によって給料が変わる
ほとんどの場合、派遣社員は時給制のため、収入は実際に働いた時間によって変わります。
一方、正社員は固定給なので、休んでも給料に影響することは少ないでしょう。



このように、時給制だと労働時間が収入に直結します
ゴールデンウイークや夏期休暇など、休みが多い月には月収が少なくなることを考慮しておかなければなりません。
また、ボーナスや定期昇給がない派遣会社も多いため、正社員より給料は低くなる傾向があります。
派遣社員が向いている人の特徴3選


派遣社員は自由度が高いため、プライベートと仕事の両立や、いろいろな仕事を経験できるメリットがあります。
派遣の仕事が向いている人は、主に次のような働き方をしたい人です。
- プライベートを大切にしたい人
- 持っている資格やスキルを発揮したい人
- 副業として働きたい人
目的によって働き方や仕事内容を選べるのは大きな魅力だと言えます。
1.プライベートを大切にしたい人
派遣は、勤務時間がコントロールしやすく、プライベートを大事にしたい方に向いています。
就業先の条件次第では、週4日以下の勤務や8時間未満の時短勤務などで働けるため、プライベートと仕事のバランスがとりやすいでしょう。
派遣は会社の行事に参加しなくてもよいケースなども多く、人付き合いが苦手な人にとってもメリットです。
無理のない労働時間で働けるため、子育てや介護と仕事の両立をしたい方にも向いています。
自分に合った日数や勤務時間で働きたい人には、派遣の働き方は魅力です。
2.持っている資格やスキルを発揮したい人
派遣の仕事は、前職や本業で培った経験やスキルを活かすことも十分可能です。
経験者を募集している求人も多く、資格やスキルを持っている人なら即戦力として歓迎されるでしょう。
資格が必要な仕事や、高いスキルが求められるような仕事は時給も高い傾向があります。
たとえば、オフィス系でも一般事務と経理事務では専門性が違うため、以下のように時給も異なるのが一般的です。
- 一般事務:1,555円
- 経理事務:1,642円
参照:株式会社リクルート|2022年8月度 派遣スタッフ募集時平均時給調査【三大都市圏(関東・東海・関西)】



企業から求められるような人材になれば、正社員として働けるケースも少なくありません。
3.副業として働きたい人
派遣社員として働く方「の中には、副業として働いているケースも少なくありません。
本業が休みの週末だけ派遣として働くなども可能です。
柔軟な働き方を選択できるので、派遣の仕事はWワークにぴったりです。



自分の勤めている会社が副業禁止になっていないかは確認する必要があります。
また、副業は認めていても、同業界での就労は禁止されていることもあるので注意が必要です。
派遣社員から正社員になる方法


「まずは派遣社員として働いてから、向いている仕事を探したい」あるいは「派遣として働いているが、いずれは正社員になりたい」と思っている人もいるでしょう。
最後に、派遣社員から正社員になる方法を紹介します。
方法は3つのパターンです。
- 自分で正社員求人を見つけて応募する
- 紹介予定派遣を利用する
- 無期雇用派遣になる
それぞれ、特徴があるので違いを理解しましょう。
自分で正社員求人を見つけて応募する
最も一般的なのは、自分で求人を探して転職活動をする方法です。
ハローワークや求人サイト、求人雑誌などでも多くの求人を探せます。
この方法は、自分のペースで探せて誰にも知られずに活動できるのがメリットです。
ただし、自分にあった探し方や「どのような職業が合っているか」を把握できていないと、うまく探せないことも少なくありません。
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紹介予定派遣を利用する
介予定派遣とは、派遣先企業の直接雇用になることを前提に派遣社員として一定期間働きます。
派遣期間は最長で6ヶ月となっており、お互いに見極めた上で社員になるため、雇用のミスマッチが起こりにくいのが特徴です。
派遣社員と派遣先企業の双方の希望がマッチすれば、直接雇用となる可能性があります。



ただし、必ず直接雇用されるとは限りません。
雇用にあたっては面接などが実施されるので合格する必要があります。
また、直接雇用されたとしても正社員とは限らず、契約社員やパート雇用になる場合もある点には注意が必要です。
無期雇用派遣になる
同じ派遣会社で3年働いている人なら、雇用期間の定めがない派遣社員なれます。
具体的には「社員」として派遣会社に雇用され、派遣先企業に派遣されて働くことです。
今までのように派遣先企業で働くことには変わりありませんが、ずっと同じ派遣先企業で働けます。



ただし、必ずしも自分の希望する派遣先で働けるとは限りません。
派遣会社の都合で指定された派遣先で仕事をしなければならない場合もあります。
あくまでも「派遣会社の社員」なので、会社が指定する企業に派遣される可能性があることは覚えておきましょう。
派遣会社で働く選択肢も視野に入れよう


近年はライフスタイルも人それぞれで、仕事の仕方も多様です。
派遣は「契約期間が定められている」ことや「社員に比べて年収が低くなる」などのデメリットもあります。
しかし、逆にメリットとして捉えれば、決して悪い働き方ではありません。
今回の記事を参考に、自分に合っている働き方だと思ったら方は派遣で働くことも検討してみてはどうでしょうか。
「どんな仕事が向いているかわからない」という人も、派遣でいくつかの仕事を経験してみて、やりたい仕事を見つける選択肢もあります。
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[…] 派遣として働くメリットについては、関連記事「【どっちがいい?】正社員と派遣社員の違いやメリット・デメリット」で詳しく紹介していますので、参考にしてみてください。 […]
[…] 尚、関連記事「【どっちがいい?】正社員と派遣社員の違いやメリット・デメリット」では正社員との違いを解説していますので、参考にしてみてください。 […]